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笑顔の雫さんを撮りたい──意を決して口にしたとはいえ、言い終わる前にほおが熱くなり、心臓が加速していった。ほとんど告白に近いじゃないか。
なのに雫は、膝を抱えたまま小首を傾げた。後ろに結んだ黒く輝く髪が、薄い肩に落ちる。
「なぜです?」
「なぜもなにも……」
口ごもってしまう。
──琴子さん、笑ったらだめだよ。壮馬はまじめにやってるんだから。
──栄ちゃんこそ、いまにも噴き出しそうな顔してるじゃないの。
背後で兄貴と琴子さんが目配せでそんな言葉を交わし合っている気配が、はっきりと伝わってきた。
ほとんど告白に近いことを言ってしまったんだ。
もういっそ、本当に告白してしまってもいいんじゃないか?
兄貴たちの前でそんなことをされても、雫だって困るとは思う。でも、ここまで俺の気持ちに無頓着となると、もう我慢できない。このまま一気に、ずっと秘めていた想いを──言え、言うんだ、坂本壮馬!
両手の拳を握りしめ、息を吸い込んだ俺が口を開く寸前、雫は言った。
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