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「じゃあ雫ちゃんがあんな笑顔を見せるのは、参拝者を相手にしているときだけなのか」
「そうだよ」
目を丸くする央輔に、俺は力一杯頷いた。
今日は神社の仕事が休みなので、俺は友人の蒲田央輔と夕方から飲んでいる。場所は、石川町駅の元町口を出てすぐのところにある居酒屋だ。肩肘張らず入れる店なので、時折顔を出している。
アルコールが進むうちに話題は自然と雫のことになり、央輔が「雫ちゃんの笑顔が天使すぎる!」としきりにほめちぎるので、俺が雫の本性を──参拝者以外には決して笑顔を見せない「氷の巫女」であることを教えてやったのだった。
「なんでまた、そんな二重人格みたいなことを?」
「知らないよ。あの子に言わせると『参拝者に愛嬌を振り撒くのは巫女の務め』らしいけど」
「神社には、そういう掟でもあるの?」
少し考える。
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