巫女さんは黒猫がお嫌い?

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「うちの猫ではありませんから、ご自由にどうぞ」 「ありがとう」  勘太さんがバスケットの蓋を開けると、雫はその中に黒猫を器用に放り込んだ。黒猫は「裏切られた」と言わんばかりに目を見開いて飛び出そうとしたが、それより先に勘太さんが蓋を閉めてしまう。 「店の看板猫になってくれよ」  勘太さんに連れられ、黒猫は去っていく。「にゃー、にゃー!」と悲鳴に似た鳴き声を上げながら。  雫は「バイバイ。元気でね」と笑顔で手を振るのみ。 「これでよかったんですか」  遠ざかっていく鳴き声を聞きながら問う俺に、雫は当然のように頷いた。 「あの子がここに居着こうとしても、わたしは何度でも追い出します。それなら、飼い猫になった方が幸せです。さあ、今度こそ仕事に戻りますよ」  社務所に歩いていく雫は「一件落着」と思っているようだが、俺は心配だった。あの様子だと、黒猫は雫を「ここの主」と思っただけではなく、よっぽど気に入ったのだと思う。  無理やり連れていって、大丈夫なのだろうか?  不安は的中した。
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