どうせ住むなら新築で?

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「お待たせしました」  湯呑みをお盆に載せ、俺は雫と一緒に応接間に戻った。  ここまで哲子さんの話から、新築建て替えにこだわる手がかりは一切得られていない。雫も哲子さんも自分の主張を繰り返すばかりで、話は平行線だ。長期戦は必至。    ため息をこらえる俺とは対照的に、雫は哲子さんの真向かいに正座するなり口を開く。 「あなたが本当に新築建て替えを強行するつもりなら、今日ここにいらっしゃる必要はなかったはず。わたしとの話を切り上げ、お帰りになってもいいはず。そうなさらないのは、なにか事情があるからとしか考えられません。それを教えてくださるまで、いくらでも待ちます」  いくらでも待つのか。 「久遠さんのお好きになさい」  お好きにしていいのか。  つまり俺は、いつ終わるとも知れない、この二人がつくり出す冷たい圧迫感に耐え続けなくてはならないということ。  ……なんの罰ゲームだ。  頭を抱えそうになった、そのときだった。
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