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「確認だけど、雫ちゃんは壮馬にだけ厳しいんだね」
「そうだよ」
「間違いないんだね」
「そうだってば。何度も言わせないでくれ」
念押しに眉をひそめると、央輔は口の端をつり上げた。
「だったら雫ちゃんは〝デレツン〟の可能性があるね」
デレツン?
「なんだ、それ?」
「ツンデレの逆だよ」
眉をひそめる俺に、央輔は滔々と語り出す。
世の中には「ツンデレ」と呼ばれる属性の人たちがいる。主に使われる対象となるのは女性。2000年代後半から流行し始めた言葉で、人によって定義は微妙に異なるものの、一般的には「普段はツンツンしているが、好きな相手にだけはデレデレする人」とされる。
デレツンとは、その逆の属性。
「雫ちゃんは、参拝者には仕事だからデレデレしている。でも神社の人たちのことは好きだからツンツン。なかでも壮馬のことは特に好きだからツンツン度アップ──つまりは、厳しいんだよ」
「そ……そうなのかな?」
半信半疑の一方で、鼓動が急加速していくのを感じた。そこに燃料を注ぎ込むように、央輔は何度も頷く。
「きっとそうだよ。雫ちゃんがそんな態度になる理由は、恋愛に奥手だからじゃないか」
恋愛に奥手──その単語で俺の中でなにかが弾け、口が猛然と動き出した。
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