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「栄ちゃんらしくないよね。私が選んだ装束が不満みたいだ。こんなことは、いままでなかった。栄ちゃんは、私がなにを着ても喜んでくれるのに」
さらりと惚気られたのかと思ったが、琴子さんは真剣な眼差しで俺を見つめる。
「なにか事情があるのかもしれない。壮ちゃんには、それをさぐってほしいの。方法は任せる」
「わかりました」
こんな目をして言われたら、引き受けないわけにはいかない。俺は勢いよく身を乗り出す。
「俺一人だと不安だから、雫さんにも相談してみます」
「この話、雫ちゃんに向いていると思う?」
琴子さんの言葉に、勢いがとまった。
雫は、恋愛感情が絡んだ謎解きは苦手だと言っている。実際、兄貴の「間」にも気づいていない様子だった。下手に頼ったら、明後日の方向に推理を展開されかねない。
──うん、俺一人でやろう。
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