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次の日の昼休み。
「琴子さんが選んだ装束が気に入らないみたいだな」
休憩室代わりの応接間で兄貴と二人きりになるなり、俺は単刀直入に切り出した。兄貴の切れ長の目が、珍しく大きくなる。
「どうして、そんな風に思うの?」
「琴子さんが装束を見せてから兄貴が返事をするまでに、間があったからだよ」
「壮馬の気のせいじゃない?」
「琴子さんも気づいていたよ」
畳みかけると、兄貴はなにか言いかけたが、苦笑いしながら首を横に振った。
「だったらごまかしようがないね。認めるよ。琴子さんがあの装束を選んだのが残念なんだ」
「なにが残念なんだよ?」
訊ねる俺を、これまで見たことがないくらい真剣な眼差しで見据え、兄貴は重々しい声で言った。
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