琴子さんの装束

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*  神社界の一部には、典型的な男尊女卑がまかり通っている。女性が神職として神事を務められるようになったのは第二次世界大戦後のこと。「女性の人権が認められた」という背景もあるが、「多くの男性が戦死したため人手不足だった」という事情もあったと指摘されている。  現在も、女性神職が執り行うことがNGの神事もあるし、境内に「女人禁制」の空間(エリア)を設けている神社もある。  この源神社は伝統があるだけに、そうした男尊女卑の思想を徹底的に貫く神職が何人もいた。  先代の一人娘である琴子さんに対しても、彼らの思想は変わらなかった。そのため琴子さんは、召使いのようにこき使われることも、理不尽な説教を喰らうことも多々あった。  いま使っている装束に買い替える際は「ちゃんと手入れをしていれば、もっと長く使えた」とさんざん嫌味を言われた。色も琴子さんの意向は無視され、一方的に決められた……。
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