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「僕が宮司になってから、男尊女卑主義者の神職たちは『こんなの神社じゃない』とやめていったから、いまは平和なものだよ。でも琴子さんには、ずっと辛い思いをさせてきた」
兄貴は目を伏せたまま、淡々と続ける。
「今回は、自分の意志で装束を買えるんだ。好きな色を選びたい気持ちだってあったに違いない。でも僕に気を遣ったのか、無難に同じ色を選んだ。それが気の毒でね。少しは迷うそぶりを見せてくれればよかったのに。そうしたら『二着買おうか』という口実にできたのに」
「だったら、宮司の特権で買ってやれば──」
そこまで言ったところで、俺は思い出した。
金の使い方にうるさい4人の近隣住民──「四天王」の存在を。
兄貴は伏せていた目を持ち上げると、らしくない弱々しい笑みを浮かべた。
「そういうことだよ。四天王を説得するのは難しい」
「そういうことは、早く言ってくれ」
自然と、その一言が口をついて出た。
俺は兄貴のような「名探偵」にはなれなかったし、「二人で難事件を解決する」どころか、住む家や仕事を世話してもらったりと助けられてばかりだ。
だったら、いまこそ。
「俺が『四天王』を説得してみせる!」
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