琴子さんの装束

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 これは俺が一人でなし遂げなくてはならない仕事だ──そう思ったから、雫に「なにかあったのですか?」と、琴子さんに「私の相談はどうなったの?」と、何度訊かれてもごまかして、「四天王」の説得に当たった。  四天王の中には、無口で会話の糸口をつかめない人もいた。一方的に怒鳴りつけてくる人もいた。言葉遣いこそ丁寧だが、嫌味っぽい人もいた。時と場合によってこの三つを巧みに使い分ける、ラスボスのような人もいた。    俺は何度も彼らのもとを訪れ、「琴子さんに新しい装束を二着買ってほしい」と頭を下げた。「琴子さんがかわいそうだから」とは言えないので、「女性神職が活躍している象徴になる」という名目を使った。  俺の奮闘を逐一書いたら膨大な量になる。四天王の常軌(じようき)を逸した対応に、さすがに心が折れそうにもなった。やっぱり雫の力を借りようかと迷ったこともあった。  それでも歯を食いしばって耐えに耐え抜いた結果、遂に四天王全員の説得に成功。  琴子さんは、新しい装束を二着買ってもらえることになったのだった。
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