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無事にミッションを達成した日の夜。俺は二階の自室で、床に大の字に横たわっていた。兄貴に「『四天王』を説得してみせる!」を大見得を切ってから二週間。疲れた。体力よりも気力がすり減っている。
でも「兄貴の力になれた」という充足感で、満たされてもいた。
「壮馬さん、入ってもよろしいですか」
廊下から雫の声がする。身を起こして「どうぞ」と応じると、襖を開いて雫が入ってきた。ブラウス風の白いデザインのシャツに、奉務中と違ってほどいた黒髪がかかっている。
「随分お疲れの様子。やはり、なにかあったのですよね」
訊ねられた俺は「実は」と切り出す。「四天王を説得する」という目的は果たしたのだし、自分がやったことを雫に聞いてほしい、という興奮もあった。
「──というわけなんです」
話し終えた俺は、つい笑みを浮かべてしまう。
でも雫は、不思議そうに小首を傾げた。
「琴子さんが男尊女卑の神職さまたちに苦労させられたとは聞いていますが、装束の色を勝手に決められたという話は初めて聞きました」
え?
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