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「そうだ、雫さんは奥手なんだよ。おかしいと思ったんだ。だって、あんなに美人で、神社の仕事に熱心で、冷たいようで優しくて、運動神経抜群で、巫女舞を美しく舞って、髪は艶やかで真っ直ぐで、参拝者の悩みごとを解決する名探偵なのにカレシがいないんだぞ!」
「……よ、よく一息でそんなに言えるな」
「それだけじゃない。料理だって──」
「もういいから!」
「でも奥手の根拠をはっきりさせた方が──」
「もう充分だよっ!?」
央輔が、やけに強い言葉で俺を遮った。その後で「あくまで可能性の話をしただけなんだけどな」とひきつった顔で呟いたけれど応じる余裕もなく、俺はジョッキの柄を握りしめる。
──雫はデレツンで、俺に厳しいのは特に好きだから。
そう考えただけで胸がじんわり熱くなって、コークハイをあおる。
さっきよりも、甘くなった気がした。
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