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巫女さんと野球を観にいこう
基本的に俺は、久遠雫と一緒ならどこでなにをしても楽しい。神社の仕事で失敗して怒られているときですら、心のどこかで楽しんでいる気持ちがある。
でもいまは、雫が隣にいるのに最悪の気分だった。
電光掲示板に目を遣る。スコアボードに並んだ数字は「0」しかない。どちらのチームも投手が好調で、点が入っていないのだ。
たったいま、5回の裏が終わった。
確か野球の試合は、5回が終わった時点で試合成立となるはず。雨などの理由でその前に中止になったらノーゲームで、翌日以降、仕切り直しになる……央輔が、そんなことを言っていたのを思い出す。
もうこの試合はノーゲームにできない──今日の俺と雫のように。
──どうしてこうなった?
横浜スタジアムのスタンド。青い座席に背筋を真っ直ぐ伸ばして腰を下ろし、試合が始まってからほとんど微動だにしない雫を見て、俺は密かにため息をついた。
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