巫女さんと野球を観にいこう

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「ブルースターズって、昔は川崎市に本拠地があったんですよ。横浜に移ってきてから勝てなくて、お客さんが少ない時代もあったけど、親会社がいまのIT企業になってから地元密着を徹底して人気チームになったんです」 「ずっと横浜に住んでいる人には、興味があるお話なんでしょうね」  ブルースターズの歴史を話したが、元北海道民(どさんこ)には効果なし。 「スタジアム限定のブルースターズエールというビールが、おいしいと評判みたいですね」 「飲みたいなら、わたしを気にせずご自由にどうぞ」  アルコールの話をしても、未成年(17歳)には効果なし。  ほかに、この場にふさわしい話題も思いつかない。  一緒に来るんじゃなかった……。こうなったら、俺の願いはただ一つ。  一分一秒でも早く、試合が終わってほしい。 *  願いが天に届いたわけではないだろうが、両チームとも投手が引き続き絶好調で、打者にほとんど見せ場がないまま9回表になった。  ブルースターズが簡単にツーアウトを取ったところで、ソルジャーズが代打を出してくる。沼津(ぬまづ)というベテラン選手だった。
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