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雫によると、沼津のバッターボックスでの構えは「神主打法」と呼ばれるもの。実家にいたとき、テレビから流れてきた「神主」という言葉に反応して興味を持って調べているうちに、沼津のことにだけ詳しくなった。今日も出番があるかもしれないと思って、ずっと緊張していた──。
「ずっと緊張って、いつからです?」
「試合が始まってすぐくらいからですね」
だから身動ぎすらほとんどしなかったのか……って、緊張している時間が長すぎるだろう!
それにしても「神主打法」とはよく言ったものだ。
確かに沼津のあの構えは、御祓いをしているときに大麻を振る兄貴の姿に似ている。見覚えがあって当然だ。
神主打法がきっかけで、特定の選手にだけ詳しくなるなんて。
──本当にこの子は、いつでもどこでも神社のことで頭が一杯なんだな。
口許が緩んでしまう。
「このまま試合が終われば、沼津選手がヒーローインタビューを受けるんですよね。生で声を聞くのは初めてです!」
氷の無表情ながらますます頰を赤らめる雫を見て、俺の口許はさらに緩んでいく。
──横浜スタジアムに来てよかった。
ソルジャーズの投手は絶好調だし、このままブルースターズを0点に抑えてくれるだろう。
今日は幸せな気持ちで帰れそうだ。
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