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「どうして、そんなことを?」
「小林さんはわたしに絵のモデルを頼んだとき、こう言いました」
──フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』や、ルノワールの『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』に匹敵する名画が描ける!
「どちらも、はにかんだ少女をモデルにした絵です。『真珠の耳飾りの少女』は鑑賞者によって解釈が異なるので一概には言えませんが、『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』と並べてあげたことを踏まえれば、小林さんが『はにかんだ少女』と解釈していると見て間違いないでしょう。そういう絵画を描きたい、つまり、そういうモデルに創作意欲を刺激されるということ。このことは、絵のクオリティーにも反映されています」
「クオリティー?」
「琴子さんの絵です。琴子さんは姉御肌で、はにかんでいるところなんて想像もできませんよね。だから小林さんは創作意欲を刺激されず、いい絵が描けなかったんです」
こういう風に解説されると、雫と琴子さんの絵の間に、同じ作者とは思えないレベル差があったことも頷ける。
「小林さんのこうした傾向を読み取ったから、わたしは恥ずかしがっているふりをしました。そうすれば、いい絵が描けて満足してもらえる。狙いどおりになりましたね」
17歳とは思えない気配りだ。驚きを通り越し、さすがにあきれてしまう。
とはいえ。
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