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次の日の朝。元町百段公園にたどり着いた俺の心臓は、いまにも爆発しそうだった。全身汗だく、喉はからからで眩暈がする。人間が、こんなにも短い時間で疲労困憊になれる生き物だったなんて──って、これは昨日も思った。
「しっかりしてください、壮馬さん。そんなことで明日からやっていけるんですか」
雫も息切れはしてはいるが、俺ほどではない。やっぱり巫女じゃなくてアスリートだ、この子。
それはそれとして、明日からも俺が一緒に走ることを前提にしているのはどういうことだ? こんなことを毎朝やっていたらとても昼間働けないぞ。
こうなったら、俺ができることは一つしかない。
鍛えよう。
そうすれば雫と、毎日一緒に楽しく走れる!
──走るのを拒否すればいいだろう。『嫌だ』と言い張れば、雫だって無理強いはしないぞ。
──なにを言ってるんだ。雫と一緒にいられる時間を少しでも増やすチャンスだ。逃す気か。
脳内で別々の自分が交わす侃々諤々の議論を聞きながら、雫と一緒に元町百段公園に入る。
今朝は秋葉さんの姿はなく、瑠実さんだけがいた。よくあることなのかと思ったら、雫は怪訝そうに小首を傾げている。
俺たちに気づいた留美さんは、ベンチから立ち上がるなり頭を下げた。
「いままでごめんなさい」
「どうなさったんですか」
雫が近づくと、留美さんは俯いたままスマホを差し出した。ディスプレイには、秋葉さんの姿が映っている。動画のようだ。
スマホを受け取った雫が、動画を再生させる。
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