雫の朝が早すぎる~元町百段編

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*  動画を観終わった雫は、スマホを握ったままぴくりとも動かなくなった。ただでさえ大きな両目は見開かれ、瞬きすらしない。 「雫さんには悪いと思ったんですが、父が『どうしても黙っていてほしい』と言うから言えなくて……ごめんなさい」  留美さんに頭を下げられても、雫はなんの反応も示さない。ここまで魂を抜かれたようになった雫は初めてだ。見ていられなくて、俺は少し強い口調で言った。 「この動画の秋葉さんは、随分と元気そうです。いつもは弱っているふりをしていたんですよね。そこまでするなんて、さすがにひどすぎませんか」 「本当にごめんなさい。でもその動画は、元気なときに撮ったものなんです」  え?  我に返った雫も、留美さんの方を見遣る。 「お医者さんから、次に発作が起こったら危ないとずっと言われていたんです。その動画を撮り終わった後も、しばらくぐったりしていたんです」  ──心臓に問題があるから医者に『無理はするな』と言われてるんだが。  動画の中で、秋葉さんが口にした言葉が蘇った。  留美さんの顔がゆっくりと持ち上がり、表情が露になる。  両目は、大きく潤んでいた。 「昨日の夜、発作が起こって──」
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