揺られ

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「彼女いるのにこういうのはだめでしょ。」 冷静になっているつもりだった。 でももう火照りきった身体では そいつを欲しがっているのが 嫌でもわかってしまった。 そいつもそれをわかって こうしているんだろう。 「今はその話はしちゃだめでしょ。」 「でも…」 言いかけたわたしの唇を唇で封じた。 わたしが言い返すとわかって そんなことをいったような気がした。 本当のところはわからない。 そういうことまで考えて やっていそうなやつだった。 指はわたしの柔らかな胸に触れ、 ついには抗えなかった。 今まで経験したことのないくらい 心が揺れていた。 「あいつにこうして欲しかったんだろ?」 なんで男はこういう時 得意げになるのだろう、と思った。 混乱している頭で必死に考えていた。 この状況をどうするべきか。 冷静なつもりだった。 けれど、 身体は素直にそいつを求めてしまっていた。 どうしていいのかわからず 身を委ねてしまっていた。 指は一度首元からするんと抜けて、 ブラウスの裾からまた胸元へと滑っていった。 腕が背中へと回り、 一瞬でぷちんと音がした。 胸元が軽くなると同時に、 そいつの手がより激しくも優しく、 上半身を触れ回した。 何もできずにわたしはただ目を細め、 荒くなった息を整えようと必死になった。 自分の状況に驚くことだけで精一杯だった。 頭の中も、心も、身体も、 わたしが生きるこの世界も、 全てがゆらゆらと揺れているように感じた。
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