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「そっかぁ。好きとか言ってたくせにそれはないよな。」
落ち着いて話すために、少し呼吸を整えた。
「ほんとにそうだよね。好きって言ってたくせに、距離がどうとかこうとか、そんなことないよね。」
「まじでそれ。好きだったらそんなの関係ないと思うけど、それを理由にして振るってことは、きっと遊んでたんだよ。わかんないけど。」
わかんない。そうだった。
彼のことなんて知っているようで何も知っていなかったのかもしれない。
そう思ったら、なんだか切なかった。
また泣きそうになるわたしの右脇腹を
何かが触る感覚がした。
そいつが足先で突いていた。
何がしたいのかわからなかったが、
そういう慰め方なのかなと思ったら
なんだか可愛い気もした。
脚先は、触ることをやめなかった。
「お前に好きとか言っておいて、本命の人が別にいるとかじゃね?」
そんなはずない、と思いたかった。
けど振られてしまった以上
そういうこともあり得てしまう。
わたしはちいさなため息を
ひとつだけついた。
「まぁ気にすんなって、もっといい男がお前にはきっといるよ。」
「うーん、どうかなぁ。でもよく考えたら、わたしからきちんと告白して付き合ったこととかないんだよね。振られっぱなし。」
「ははっ、嘘でしょそんなの。」
「本当だってばぁ。今まで付き合った人はみんな流れでなんとなくとかだったの。わたしがきちんと好きになった上で、今回なんかは先に向こうから言われていたのに、結果これだよ。なんでだろうなぁ。」
こんな話をしながらわたしは、
今にも流れ落ちそうになっていた涙が、
いつのまにか乾いていることに気が付いた。
「そんな自信無くすなって。俺はお前がそこそこ可愛いと思ってるよ。」
そんなことを言ってくれる人は少ない。
どちらかといえばブス、
という感覚で生きてきたわたしにとって
嬉しい言葉だった。
「そうなの?そこそこなんて笑っちゃうけどそれは褒め言葉として受け取っ…」
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