六ノ刻、焦燥と秘め事

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「奪衣婆から聞いただろう。先生、あんたのは呪術によるものらしい」 「つまり。僕に恨みを抱く奴らの仕業、だと」 「……おい。待て」  貞次は顔を(しか)めて、足を止めた。  湿った草の匂いが、辺りに立ち込める。  「ずいぶんと心当たりがありそうじゃねぇか」  今しがた、修司が口にしたのである。 『奴ら』と。   「洗いざらいすべて話せ。その縁とやらも」  そこにこの忌まわしき黒髪の呪いを解く、糸口があると確信していた。 「縁、か」  人が産まれ、生きる――そこには多くの結び付きが存在する。  父や母といった肉親だけではない。密に絡み合う、糸の如き。兄弟姉妹、祖父母に祖先や先祖の血脈。 さらには、そこに至るまでに肉親達が辿った道でもある。  何が欠けても、その者はこの場にいることが無かっただろう。すべては偶然であり必然。  糸屑(いとくず)のような細き縁であっても。その魂を、肉体を。過去と未来を構築するのだ。 「僕はもう、死ぬのだな」  小さな声だった。  耳をすませていなければ、虫の声にかき消されてしまうほどに。  
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