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「おい親父殿、それだけかよ」
勇者が見ると、一緒に旅をしてきた男が身なりを整えて立っていた。
「う、王子・・・いつ戻ってきたのだ」
王様はたじろいた。
一緒に旅をしてきた男のことを王様は王子と呼んだことに、勇者は戸惑った。
「勇者様と一緒に旅をしていたのさ。親父殿が金を出さねえって聞いたから、俺が勇者様のスポンサーになっていたんだ。国の一大事に金を出し渋ってどうするんだ」
男は勇者を見た。
「親父殿が迷惑をかけた。国を代表してお詫びする」
「いや・・・まさか王子様だったとは。私の旅を助けてくださり、ありがとうございます。なんとお礼申し上げればいいか」
「勇者様、勇者様には旅をしてきた時と変わらないままで接してくれや。なんか丁寧にされるとくすぐったい」
男は照れながら言った。
「勇者様、話は変わるが、これからどうするんだ?」
「私はまた旅に出るつもりだが・・・」
ふうん、と言って男は王様を見た。
「親父殿、俺はこれからも勇者のスポンサーを続ける。まあ、親父殿が引退するまではまだしばらく旅を続けさせてもらうぜ」
「何を言うか。お前はこの国でただ一人の後継者なのだぞ!今回の旅も知らぬ間に城を抜け出しおって」
「いいじゃねえか、ただ遊んでいるわけじゃねえんだ。勇者様、また後でな!」
勇者は男との旅を楽しみにしながら城を後にした。
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