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勇者は故郷から遠く離れた街でただ一人、呆然と立ち尽くしていた。
勇者は自分のステータスを見る。レベル50。魔王を倒すには全然足りない。どう考えても一撃で倒されてしまう。
「あのジジイは本当に、魔王を倒させる気あるのかよ・・・」
体力も攻撃力も防御力も魔力もスキルの強さも足りない。すべて足りない中でどうやって倒せというのか。それに、ここ2、3日何も食べていないので倒れそうだ。
「なんだ、お困りのようだな。勇者様」
勇者は声を掛けられた方を見ると、体躯の良い中年くらいの男がいた。背中には大剣を背負っている。
「どうした?そんな絶望的な顔するなんて勇者らしくないぜ。腹でも減っているのか」
男にそう声をかけられ、思わず勇者は涙を流した。
「おいおい、ちょっと話を聞いてやるからそこの食堂にでも行こうや」
「なるほどなあ。そいつは泣きたくなる話だ。あのドケチな王様のせいでな」
勇者は男が「おごりだ」と言って適当に注文して出された料理をむさぼりながら、今までのいきさつを話した。
「それで、あんな絶望的な顔をしていたのか。今時の勇者ってのは辛いねえ」
男は勇者に同情した。
「なあ勇者様。俺と組まねえか」
料理を夢中で食べていた勇者は驚いて顔を上げた。
「俺も別の国から魔王を倒すように言われていてな。勇者様と目的は同じなんだ。なら一緒に魔王を倒しちまおうぜ」
男は豪快に言った。しかし、勇者は残念そうに首を横に振る。
「それはありがたい。けれど、私にはお金がないからこれ以上旅を続けていけない。魔王を倒さないといけないのに――情けない話だ」
「なあに、金の心配はするな」
男はブラックカードをすっとテーブルの上に乗せた。
「俺がスポンサーになってやる。俺は勇者様じゃないから物の売買が可能だ。勇者様、あんたが旅の間金に困らないようにしてやれるぜ。正直、勇者様と旅をしているとモンスターからアイテムを得られる確率が上がるから商売しやすいっていうのもあるしな」
「何だ、商売人だったのか」
「ちょっと違うが、稼ぐことが好きな旅人とでも思っていてくれや。俺と組むのは嫌かい?」
「いや、むしろ助けてくれるのはありがたい。私と旅をしてもらえるか?」
「もちろんで」
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