グッドラックローバー

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グッドラックローバー

 サッカーボールが弾み、駆け寄る足元から砂埃が舞い上がった。俺と色違いのゼッケンのやつがボールを捉えた。五月晴れ、なんて聞こえはいいが、春など追い越した太陽の鋭い陽射しが、じりじりとグラウンドと選手達に照りつける。  あっつい、マジであっつい。半袖、半ズボンなのに。今で暑いって夏が来たら死ぬんじゃねぇの。ゼッケン(ごと)、上のシャツ脱ぎてぇ。  舞い上がった砂埃を蹴飛ばして、袖で額の汗を拭う。俺はボールをキープしているやつの足先、視線とボールの動きを追った。 「(しゅん)のマークだろ? ボールキープさせるなっ!」  キーパーの梶が俺に指示を出す。けど、無視。そんなの分かってるつーの。俺だって、こいつにあんまりキープして欲しくない。ドリブルする相手と対面し、足を出そうとするが、キープしつつ味方の動きと俺との間合いを計っている。こいつ、上手い。パスを出す瞬間でカットするか、最悪、足を止めないと抜かれたら一気にボールをゴールに押し込まれそうなオーラがある。なんせ隙がない。  焦った俺が半身で足を出そうとした瞬間に、相手はボディフェイント。1フェイクで騙されて、利き足の動きを取られた。 「やばっ」 「バカッ! 俊、勢い付けていくなッ、戻れ」  梶、うるせぇ。  相手は勢いを付け、足にボールがくっ付いてんの?ってぐらい巧みに、走り去った。抜かれた背中を必死で追ったけれど、追いつけずに、10番のゼッケンにシュートを決められてしまった。
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