灰色の子犬、ひとときの戯れ

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 メガネをジャケットの胸ポケットに掛けた瀬戸は、一言言い置いてその場から出ていった。  後には屍になった同僚達だけが残される。 「ああ、なるほど」  その一言から瀬戸の笑みの理由に気付いた神永は、思わず口元に片手を添えて笑いを噛み殺した。 「あの女神に会えるって分かったから、嬉しかったんだな?」  瀬戸に代打のメッセージを送ったのはマスター自身だろうが、マスターの文面には瀬戸の女神の存在を思わせる何かも書かれていたのだろう。  あのネクタイの贈り主である瀬戸の女神は、我らがマスターの部下という側面も持っている。
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