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ドブ板通り自治会。①
もとは場末のこじんまりした演芸小屋だった自治会の建物に、惣太郎とロリが仕留めた。
いや、ロリが倒した二体の不審者を小屋の中央に据えられた長机の上に寝かせ並べて、旧舞台に会長席と重役たちの席を並べて見守る自治会員たちの照覧にあずかっている。
「惣太郎くんや。これが例の噂になっている“奇怪な人々”かい?」
自治会長を勤める白髭の老人。韮山甚左衛門が先ず最初に口を開いた。
「あたしもロリさんも襲われましたのでそのようですね。今はロリさんのお陰で気絶していますが、たぶん間違いないでしょう」
惣太郎の応えに会長は、ふーむ。と呻き。他の会員と共に三十代と十代前半の男女の荒縄でぐるぐる巻きにされたを肢体をやや離れた場所から身を乗り出して眺め見た。
「会長さん、コイツらどうしたもんかね」
「会長。官憲を呼びましょうか?こんなのうちらの手には負いかねますぜ」
「しかし、そうは言っても官憲を呼び込むのはどうだろう」
「そうじゃ。ワシらは皆めいめい大なり小なり脛に傷もつ者が多い。無闇に胸襟を開いてアチコチ探られては敵わんぞ」
老若男女の会員は口々に意見や異論を述べつつも、肝心の噂のタネの生きた証の扱いに大層苦慮している様子だった。
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