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ドブ板通り自治会。②
「bullshit(くだらない)」
「ロリさん。口が悪いですよ」
喧喧囂囂。
会合時間が分単位で経つにつれて、会員同士の結論の出そうにない半ば言い争いになっていく有り様を、あまり誉められたものではない言い回しを使って表現したロリを惣太郎は即座にたしなめた。
「して、惣太郎くん。君ならどうするかな?意見を聴かせて欲しいのだがどうだろう」
韮山自治会長の言葉を受けた惣太郎は無言のまま、縛られている“奇怪な男女”の側により、素手では触らずに長机に置かれていた宴会用の箸入れの竹筒から箸を一組取り、その箸で男女の両手を上に向け自治会長に見せた。
「これはなんだろうね惣太郎くん。なにか意味のある紋様かね?」
男女の手のひらの盛り上がった肉の【◎印】に目を奪われた自治会長は、両の拳を長机の上で強く握りしめ、まんじりともせず尋ねた。
「病気かナニかはわかりませんが、ただこの方々に不用意に近づいたり、特にこの手に触れられたら人体に悪影響が出ると推察しますねぇ」
「左様か…。コヤツらめにうちの孫娘は拐かされたかもしれないと、君は云うのだな……」
「正確にはわかりかねますが、おそらくは」
「正体が分からないから役人に知らせた方が無難だと、君は云うなだな?」
「…」
会長の言葉に惣太郎は無言で頷いた。ロリは、そんな惣太郎の顔を無表情に見上げる。
その眼差しから発せられる眼光は、完全に惣太郎を責めている。
つまり表情には出さないが、ロリはすこぶるご機嫌ななめなのである。
何故なら、自治会長が呟いた言葉はロリが惣太郎から知らされていない事情だったのだだから。
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