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ドブ板通り自治会。③
「あー。ロリさん。言い訳させてください」
「聞く」
澄んだ瞳の中に潜ませる気すら無くなった殺意が、惣太郎のくすんだ網膜を刺激する。
「あ、あたしも一刻前までは知りませんでした。本当です。信じてください」
「…For real?(本当?)」
少しだけ、ちょっぴり分だけ、ロリさんから殺気が消えたかな?
惣太郎はちょっとばかり安堵した。
だが、ロリの瞼が言い訳を始めた時分から一向に閉じてないのが不安だった。
「えーホントです。実は夕方、うちを訪ねられた会長さんから聞いたばかりでして他意はありません。信じてください」
「そう」
ロリの澄んだ碧い瞳はまるで惣太郎の黒目の中の水晶体を眼光の鋭さだけを尖ったナイフのようにして刺して、物理的には右手の裾から覗かせた四つの銃口が惣太郎の下腹部をガッチリ見つめていた。
殺気は、さっきより何故だか一段と増していた。
その眼は紛れもなく、本職さんの色味だ。
「話せばわかります」
本気の殺意を圧で察した惣太郎は精一杯の誠意を込めて、そう心からの謝罪を込めて、ロリの瞬殺技を思い止まるよう静かに促した。
無駄だった。
ババン!
ドタタ!!
発砲のその時、カメレオンじみた左右個別に動く眼を同時に見開きギョロつかせ、荒縄でグルグルにされたその身をものともせずに起き上がった“奇怪な人々”が、直後、まるで瞬時に命を絶たれた芋虫のようにグネグネ体をぐねらせて床にグダン!と転がった。
「う!うわ!」
「きゃあ!?」
会員の皆さまが騒ぐ中、転がってもなお彼らは、不定期にギクギク大小の痙攣して、すぐ静かになった。
「気楽に倒しますねぇ」
「Disgusting (生理的に無理)」
「…ですか」
ロリがさらりと云うように“奇怪な人々”という人たちは、その迫りかたや倒れかたが、もうなんというか不気味そのものだった。
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