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ドブ板通りの雇われもの。⑤
しかして、この年の差の激しい二人組は現在、彼らが住まう町である“ドブ板通り自治会”に二人で日給50銭で雇われて、ご町内の見回りを四六時中行っている。
雇われた理由は昨今、ドブ板通りと近在の町中を騒がす【奇怪な人々】がもし本当に現れたら、身を呈して町の人を護る役目を担わされているためであった。
「…Bizarre people(奇怪な人々)」
ロリは首を左に十二度傾けながら独りごちる。
それと云うのも、その“奇怪な人々”という存在そのものが珍妙な人間たちで、ふらり、どこにでもいそうな身なりと風体で町中に突如現れて、彼らに気付いた人間を人目の付かない裏路地辺りに誘い、いきなり何事かをしてくる。
などという、なんともフワッとした巷の噂が元だったからだ。
故に、未だに誰も、少なくとも依頼されて探索をはじめたロリや同居人の確認した限りにおいては、ドブ板通りをはじめとして近隣の町の人も噂の存在は知っているものの、奇怪な人々なる人間たちに巡りあった者とていない幻の存在だったのだ。
「…」
Appearing freely and attacking…(ぶらり現れて襲ってくる…)
What's that interesting(なにそれ おもしろそう)
でもロリは、内心ウキウキなのである。
だって大好きな戦闘が、意味のわからない奇怪な奴ら相手に好きなだけ出来そうなのだから!
もちろんそんなことは表情にも態度にも一切出さないが、この話を同居人から聞いたロリは、自治会の範疇や自分たちの力でどうこうできない国や会社に雇われた船が相次いで沈む事件のことはともかく、こんな正体もつかめない可笑しな人間たちの風聞を信じて金まで出して、風説の正体をつかむか、出来るなら引っ捕らえて巷説を抑え込むつもりのドブ板通り自治会の、自分では解決する気がない態度に感心していなかった。
でも、それを委細承知の上で『これでロリに少しでも旨いものが食べさせられる!』などと言って手放しで喜んでいた。甲斐性なしな方面ではご町内の有名人である同居人の、自分の商才のなさから粗末にならざるを得なかったロリの食生活の変革を優先してくれる彼を、ロリはとても好ましく思っていた。
そして、同居人の彼と一緒に存分に力を出して遊べることに彼女は、それが一番楽しくて心の底からウキウキしているのだった。
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