階下だよ全員集合

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階下だよ全員集合

「きゃあああああ!!落ちるぅううううう」 「うるっせえ!静かにしろ殺すぞ!」 「何もしなくてもこのままいけば死ぬわよおめでとう!!」 真っ逆さまに、落ちる。落ちる。 絹をさくような悲鳴を聞きながらも、キースはニルと喧嘩する。 ああ、床が近づいてくる。石造りの床に頭をぶつけた経験はないから、なんだか新鮮な脳みそが飛び出そうだ。 「そんなことになる前に助けますしおすし」 ぼふん。やわらかな感触とともに、そんな音がした。 怪我しなかった……らしい。何故。 実際はワンフロア分しか落ちていないが、かなり長い時間落ちていたように思える。 落ちた拍子に目を回したままで混乱していると、不意に聞こえるテンションの高い男の声。 「いよーぅ、キースとニル。ついでにラッスー」 声とともにひょっこり視界に現れたのは、ベルト。それにパティだった。 「何で穴落ちたらお前らがいるんだよ……色々とどうなってんだ」 「あ、えっと、あの穴は私があけました」 おずおずと手を挙げるパティ。 「天井に大量の銃弾を撃ち込んで、おっきい穴あけました……すみません……」 「いや、謝ることねぇだろ」 「あ、えっと、ご、ご無事です?」 「重傷数名。見れば分かるでしょ」 淡々と述べながら、それとなく輪の中から距離を置いている彼女。 それとは対照的に、ベルトがずずいと輪の中心に踊り出てくる。 「お前ら俺がいなくて寂しくなかったけー?戻ったついでに助けてあげちゃったぞぅ」 妙にテンションが高いベルトがフラメンコを踊っている。 キースが怪訝に思っていると、隣からパティが咳払いをひとつ。 「ベルさん、皆さんに言う事、あるでしょう?ちゃんと言いましょうね」 「あぁー……うん、そーね」 至極嫌そうな顔のベルトがキースに向き直る。 向き直るといっても、目を逸らして顔を直視していないが。 ともあれ何を言う気かは知らないが、キースを代表と定めたらしい。 「えっと、本日はお日柄もよく」 「ベルさん遠回りしないで、すぱっと言ってください!」 「わーーったよもう!!皆さん色々すいませんでした!」 一昔前の携帯電話のごとく、思いっきり腰を折る。 しかし謝られた当の本人達……キースもニルも、きょとんとしていた。 「なに急に謝ってんだお前。何についての謝罪だよ」 「えっ?いや、色々あんじゃん?」 「例えば?」 「えぇー……っとぉ……」 逸らしていた視線をキース達の顔面、その目に向ける。 二人とも、本当に心当たりがないという目だ。 要するに工場メンバーズは、ベルトの嫌がらせをものともしていなかった。 それどころか、許すのを通り越してもはや忘れてしまっていた。 ベルトがいくら反省しようが、関係なかった。謝り損である。 「……そっか。もう忘れちゃったか。へへ」 「何笑ってんだ気持ち悪ぃおっさんだな」 「好きに呼べよ。今はおっさんでもいいもん」 「あぁそうかよ。おっさん、双子の容態は?」 「ごめんやっぱ腹立つからおっさん呼び疾くやめてくんね?」
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