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「なんですって?」
ニルが怪訝そうに眉根を寄せる。
あの時キースは見たのだ。彼らのサングラスの下は、キースが知っているようで知らない人物。
過去の象徴として執着し続け、そして、ラスカルに付き添われながら断ち切った亡霊。
「あれはテッド・アンダーソンの顔したロボット共だ」
「テッド……あぁ、そういえばあんた錯乱して幻覚見てたわね。きっとまた幻覚よ」
ねぇ、そうでしょ。社長を見遣る。が、彼は視線を合わさない。
何がそんなに不安なのか、青い顔で俯いている。
それを見るにつけ、ニルは思う。キースの幻覚でも憶測でもない、事実なのだ。
「……どういうこと?」
ニルは若干焦り始める。
「そんな、嘘よ。だって私ブルーノから聞いたのよ。何で話違うの?」
「お前も嘘つかれてたってだけだろぉ。今どうでもいいんだよ、んな事ぁ」
社長はおもむろにポケットから何かを取り出す。
長方形の、リモコン……恐らく黒服達のためのものだろうか。
ボタンをどれかをひとつ押せば、謎の不具合が生じていた黒服人形が再び動き出す。
「待って!私の同僚を殺さないでっ……!」
「あーん?何言ってんだぁお前」
銃口を向けられているキースとラスカル。
ふたりを守るべく、ニルは間に入る。
ニルは社長に内通していた。要は仲間である。
社長にとって、自分の命には助ける価値があると思ったのだ。
しかし社長は嘲笑する。
「お前も射殺対象だよ、ばぁか。――死ね、クズ共」
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