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恋する乙女のはなし
私には好きな人がいる。
けどその人は私の恋人でもなんでもない。完全なる片想い。
その男に会ったのは、十一年前。
あの黒っぽい子どもに、突然拉致された私のお目付け役だった。
聖職者のくせに挙動がいちいち気だるいやつ。
囚われの身のくせにぎゃあぎゃあうるさくわがままを言う私に、その男はこれまた面倒そうに世話を焼いてくれた。
知ってる?監禁された人ってね、その場所で誰かとずっといると、いつしか好意を持つようになるの。
私も見事にそうなったわ。
だから私……その男と、寝たの。
私ね、わかってなかったのよ。自分が恋した相手だからって、一度くらい抱かれたからって、向こうは遊びを知ってる大人で。
つまりはそういうこと。
その後すぐに私は解放された。
私を自由にする代償として……、左目を潰された上に友達を殺してしまった、ブルーノのおかげで。
でも、私その時すごく怖かったの。
彼ってね、慎ましいものが好きなのよ。髪型なら三つ編み、服ならシンプルイズベスト。
とにかく大人しくて、清楚なものが好き。だから、私のした事を絶対に許さないはず。
嫌よ。絶対嫌よ。だって、熱く体を重ねた初恋の人にも愛されなかった私よ。
その上、唯一無条件で愛情を注いでくれる存在まで失くしたら、私はどうしたらいいの。
考えた結果、閃いた方法はひとつ。
……『隠し続けること』だった。
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