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ルーク・ローレンス(前編)
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「おい、今何時だ」
「午前六時過ぎ……だよ」
「嘘つけ!お前さっきもそう言っただろ!時計の針がまるで進んでねぇのはどういう事だよ!」
「そうだねぇ、進まないねぇ」
回し車仕様の窓枠に座り、まったり氷水を飲みながら返すラスカル。
返事はよこすが、まるで相手にしていない感じだ。
が、その薄ぼんやりした目はじーっとキースを見つめている。
他の誰かと話をして気を紛らわそうにも、シフト番ではない工場レディースはすやすや眠っている。
故にこのへんちくりんな老人もどきとしか喋れないのである。
初対面でいきなり泣かれたせいで、最初の内は遠慮がちに接していたものの、たった一晩ですっかり慣れてしまった。
今では、イライラさせられると気軽にしばく仲だ。それはもうバシバシと。
「何だよさっきから、見てんじゃねぇよ!ふざけたしっぽ付けやがって、このッ」
「ちょ、待ってくれ回さないでくれ、酔うからやめ……ぁああああああ」
とうとうイラッと来て、窓辺までいき枠を掴んでブン回した。
スピードを出しすぎたハムスターのように回し車の上でグルングルン回るラスカルは、しっぽも相まって本当にあらいぐまに見える。
朝っぱらから荒れ狂うキースは、バリバリ頭をかきむしって叫んだ。
「ッだぁーもうダメだ!!ここにいたら頭おかしくなる!ちょっとカリン叩き起こして町まで行ってくる!」
だいぶ回し車のスピードが下がり、でろーんと伸びているラスカルに向かって怒鳴った。
嫌がらせのつもりで言ったのに、向こうは待ってましたとばかりに顔を上げ「いってらっしゃい」と微笑んだ。
それにまたむかっ腹が立ち、手近のクッションを投げつけた。
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