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「醜いもんだろう?」
ラスカルは、穏やかに微笑んで自嘲した。
ラスカルの幼い肢体は、肌は赤黒く突っ張っていった。
ケロイドだ。全身がケロイドに包まれている。
下腹部には、切開した後で無理矢理に縫合したような痕跡がある。
「この肌はねぇ、父親にやられたんだ。死なない程度に薄めた薬品かけられてね。いやぁ苦しかったなぁ。熱いし痛いし爛れるし」
自身に起きた惨事にもかかわらず、あくまでのん気に、ラスカルは語る。
次に、痛々しい下腹部に触れた。
「これはぼくが性別をはっきりさせない理由の一つだよ。知ってるかぃ? ここに入ってたはずの大事なもの」
下腹部に入っているもの。
男性なら膀胱だが、女性なら子宮。
言い回し的に、奪い取られたと考えられる。
そして性別を曖昧にしか話さなかった理由が、それ故だとすると。
まさかこいつ、とキースはある結論を導き出した。
「お前、女か⁉」
「はてさて、子供も作れないケロイド人間なんて、女と呼べるのかねぇ」
抑揚のない声で、彼女は呟く。
「あの日、ぼくはイカれた連中に拉致されて『去勢』された。彼はちゃんと助けに来てくれたよ。頭を撫でてくれた、背中をさすってくれた、でもかけて欲しい言葉は何ひとつくれなかった!」
それが性別を曖昧にごまかす一番の理由だと、半ば感情的にそう締めくくった。
だから性別を聞かれて、襲い掛かってきたのか。
ただ一人の友人でさえ認めてくれなかった真実に、気安く触れられたから。
そして、顔が似ていたという理由もおまけで。
「えっと、その……何つったら言いか、そのぉ……」
義理で謝罪の言葉を絞り出すキースだが、ラスカルは聞いていなかった。
彼女の頭には、遺言ともとれる友人の言葉が過ぎっていた。
約束であり、呪いでもある言葉。
長い長い孤独の中でさえ、ひと時も忘れなかった言葉。
『――俺が死んでも、お前は独りぼっちにならない』
『何故なら俺は、お前の友達は、死んだことなんて忘れて、性懲りもなくまた戻ってくるからだ』
『あの世がどんな所かわからない、けど必ず戻るから……だから、生きろ。生きて待っててくれ』
『俺達はずっと、二人ぼっちだから』
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