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202109 紗のような不安と、煤のような不安
二〇二〇年の四月、新型コロナが始まったころは、世界に一枚白い紗が引かれているような感じでした。
その年の桜は、自粛のおかげで観光客がおらず、地元民としてはじっくり堪能できるはずでした。が、心に白い紗があって、桜を美しいとまったく思えなかった。すべてにおいて、白い紗が感情を漂白していました。
それは新型コロナにたいする漠然とした不安でした。
二〇二一年の九月、若い世代もワクチンが打てるようになりました。が、ワクチンを打っても罹患数は減らず、私の心にはうすい煤のような不安があります。
ある日ふと、不安で当然だということに気がつきました。
なくなっていく仕事、減っていくお金。緊急事態宣言で自粛が要請されても、給付金は出ない。救急車の出動回数が増え、医療も逼迫している。未来を見通せず、将来どのような計画を立てればいいかもわからない。
来年生きているという保証もない。
なので私は人生が続いたら何をしたいかということよりも、人生が終わるまでに何をしたいかという行動にシフトしました。
私は小説を書いているので、人生が続くなら小説の公募に作品を書きます。が、人生が続かないなら、推敲しかけている長編を完成させたいのです。
そんなわけで、今はうすい煤のような不安を抱えながら、小説を書いています。
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