錆びた世界からの贈り物

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 金のないものは、この世界で生きる価値もない。  世界の神に、そう言われている気分だった。金がなければ迫害され、社会からは追放される。貧民街に追いやられた人間は、残虐性を持った富裕層の玩具にされるか、ただ溝鼠みたいに罪を犯していくだけ。あるいは、何もせずに人間であるまま緩やかに死を待つだけだ。  俺もその一人だった。貧民街の暗いゴミ捨て場で座り込み、みっともなく腹を鳴らす。俺と同じようにここに流れ着いた人間たちは、ごみ袋を枕にしてこと切れている。なかには、白骨化が始まっているものもあった。  可哀想とも、こうはなりたくないとも思わない。ただ、胸の奥で小さな憎しみの炎を揺らめかせて仄暗い空を見つめるだけ。数年前まではまだ青く見えた空は、今や何の希望もない汚れたものに見える。  こうなったのは、全てアンドロイドのせいだ。新たな世界で人間の奴隷やペットのようなものとして生まれた奴等は、いつしか世界の半数を占めるようになっていた。今や一家に一台アンドロイドがいるくらいだし、そのお陰で世の中が便利になりすぎて失業率も増加する一方だ。世の中はすっかり腐りきってしまった。  ただの機械のくせに、人間から世界を奪いやがって。俺は落ちていたスパナを力任せに地面に叩きつけた。キィンと音がなって、それは弾みながらゴミ捨て場の入り口の方へと滑っていく。  カラン、とそれが何かに当たる音が響いた。また流れ者がここに辿り着いたのか、と顔を上げる。  だが、そこに居たのは無精ひげを生やした男でも、死んだ目をした老人でもなかった。  アンドロイドだ。  ヒビが入って穴の開いた部位から覗く無数の管と精密機械、致命傷とみられる傷を負いながらも変わらない表情。そして、頬に刻まれた番号。  ブロンドのショートヘアの女性型アンドロイドは、ぎこちない歩き方でフラフラと近寄ってくる。
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