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「私は、どうすれば良かったのでしょう。私には、家事を主とした奉仕プログラムしかインストールされていないのです。主人がいなくなった今、命令もなく、ただそこに立っているだけの機械でしかありません」
「だろうな。役に立たないヤツは、人間だろうが機械だろうが捨てられる。だから、お前もあそこにいたんだろう?」
「はい。命令を求めて、彷徨っていました。自ら機能停止することも、実はプログラムの奥底にあったのですが、アンドロイドは基本的に人の手によってでなければ停止できません。自ら停止しようとすると、自己防衛のプログラムが発動してしまうからです。ルールを犯すことも禁止事項であるため、信号無視をして破壊することも、どこかに飛び込むことも私には許されていないのです」
女は相変わらず機械らしい声のトーンで語る。テキパキと家事を進める彼女の姿をぼんやりと見つめていたが、複数のことを同時進行しているようで、本当に家事に特化したアンドロイドなのだと感心する。
だが、語ることは家事専用のアンドロイドらしくない――ましてや、機械が語るようなものではなかった。プログラムにはない言葉を話しているような気がしてならない。
あまりにも、人間にそっくりだったから、俺は普通に話せているのだと思う。コイツがもっと機械らしい言動ばかり吐いて、見た目もロボットらしいものだったら、こんなにペラペラ話したりなどしない。
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