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「悪い。でも、紫月が深刻そうな顔してたから。元気出た?」
「元からそんなに落ち込んでないよ」
「じゃあそんな顔はするな。心配するだろ」
心配している割には励まし方がこの上なく雑だが、奴はこんなことで嘘はつかない。心配しているのは本当らしい。
「お前も水いる?」
「え?」
「いや、要らないなら良いけど」
「あ、じゃあお願い」
おもむろに立ち上がった葦屋は、近くにあったセルフの水をコップに注ぐ。その後ろ姿を眺めながら、私は先程の彼の言葉を思い出していた。
――紫月が未だに工くんのことを引き摺ってるみたいだから。俺が断ち切ろうと思って。
友達だから、と言う言葉だけでは片付きそうにないその言葉の真意は、そう簡単に見つけられなさそうだ。
コップを両手に戻ってきた葦屋は、一つをを私に渡しもう一方を勢いよく煽る。
「やっぱり苦かったんだ?」
「ほっとけ」
「葦屋」
「ん?」
「ありがとう」
葦屋は私の言葉に顔を逸らす。
隠しているせいでハッキリは見えないが、うっすらと赤らんでいるように見えた。
「ねえ、聴きたかったことがあるんだけど」
「何?」
「紫月はさ、工くんが恋人ゲームしてるって聴いてどう思った?」
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