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「……工がそんなことしてるって信じたくなかったけど、麻里の件を考えると納得出来た」
葦屋は麻里が工と付き合ってること、知ってた?
そう尋ねると彼は無言で頷く。そして、口を開いた。
「俺も信じたくなかったんだけど、工くんは予備校時代の奴らとつるんで恋人ゲームをしてたのは事実だと思う。彼女取られた奴もいるから誤魔化せないよね」
「何にも知らなかった」
「……」
「そんなことするやつだったのに、何で私のことは彼女にしてくれなかったんだろう」
悔しがるのが正しい感情なのかは分からなかったが、それでもそう思わざるを得なかった。間違いなく、私は工のことが好きだったのだから。
例えそれがゲームの相手だとしても、麻里に負けたことが悔しかった。
私のことも選んで欲しかった。
「――俺は、紫月が工くんと付き合わなくて良かったと思ってるよ」
「それは、どうせ振られちゃうから?」
「お前が苦しむから」
大学1年の時のことを覚えてる?
葦屋の言葉に、私は何の話だろうと首を傾げた。彼は小さく鼻で笑うと、思い出すように言葉を繋ぐ。
「サークルで紫月が号泣したことがあっただろ?」
「それは悪しき記憶でございますね」
「忘れろって言われたけど忘れられなくて。友達と喧嘩してあんな真剣に泣いてるやつ、久々に見たよ」
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