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三枝さんが訴えたら間違いなく塚田さんの首が飛ぶぞ、と心の中で思いながらも、顔に出ないよう表情筋を酷使する。
もう慣れたが、限界も近い。
大手自動車メーカーに務めて半年。
アットホームな職場で、上司に媚びを売りながらも、同期や先輩たちとワイワイしながら仕事に励む。そのつもりだったのだが。
現実は甘くない。私の目論見は秒殺され、過酷なパワハラ現場に送り込まれた。無理。
聴こえないふりをしながら、メールボックスの中身を確認する。そこには一斉送信で送られた、先輩からのメールが届いていた。
『本日を持って、退職することとなりました』
――そりゃないぜ、ジーザス。
顔を上げると、デスクの離れた送り主の先輩を見る。青白い顔と目の下に刻まれたクマが、見ていて痛々しい。
先輩もパワハラを受けていた。
塚田さんじゃないけど、先輩の班の主任に怒鳴られていたのは記憶に新しい。
20代の先輩たちの表情を伺うも、その顔色は悪い。私はその日、仕事を辞める決心をした。
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