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彼の側にただ居たい。その想いでは、割り切れない事件が起こった。
同じ学科、同じクラスの扇田麻里。彼女に誘われて工と同じサークルに入った私は、ことあるごとに工にアピールする麻里の姿に真っ黒な劣情が浮かんだ。
彼女が工の特別になるのが嫌で、ことあるごとにアピールした。必死だった。
そのかいあってか、私と工の仲がそれなりに進歩した。彼の帰宅路に私の家があったことも幸いして、2人で通学したり無駄なことでメッセージを送り合う程には仲が良かった。名前も気付けばお互いに呼び捨てしあっていた。
ところが、麻里の放った一言で環境が変わる。私と付き合っているのかと、サークル活動中に口にしたのだ。みんなが聴こえるほどの大きな声で。
「んなわけないだろ」
彼の言葉に、息を呑んだ。
照れ隠しだったのかもしれないけど、その時の私にとっては工に否定されたことが全てで。
以降、彼に関わることを辞めた。同じ空間に居ることが辛くて、入っていたサークルも麻里に内緒で辞めた。それが精一杯の拒絶だった。
程なくして、彼女が工と付き合うことになったと聴いたとき妙に納得した。私を工から遠ざけるためにやったのだと気付いたが、後の祭りだった。
「今でも思うよ。あのとき、諦めなかったら良かったのかなって」
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