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葦屋、参上。
いつも通りの1日だった。帰路にある駅で、葦屋と再会するまでは。
たくさんの人が行き交う人の中で、彼は笑顔で手を振っていた。その久々に見る姿に、私も自然と笑顔になる。人を掻き分けながら彼の元へ辿り着くと、開口一番に葦屋は何故居るのかと問うた。
彼の言葉は必然で。大学時代は互いに福岡に住んでいたのだ。関東の、それも大都市ではない駅で再会するなど、誰が予想出来ただろう。例外なく、私も疑問に思っていた。
「就職してここの支店に配属されたんだよね。葦屋は? まだ院に居るんじゃないの?」
「まあな。俺は就活でたまたま。お前が居るならこここの企業でも良いかもな」
「そう言うところは相変わらずだね」
変わらないなぁ、と呟くと、葦屋はお前もなと肩をつつく。が、すぐにその言葉を否定すると、ニヤつきながら口元を手で隠した。
「紫月は少し太ったんじゃないか?」
「あー、そんなこと言うんだ。セクハラ〜」
「冗談って。仕事どう?」
「過疎地。潤いがないんだよね」
「オッサンばっか?」
「大正解」
思わず、はぁと溜息を吐く。
それが彼に心配を与えたようで、眉を顰めた葦屋と目が合った。
「大丈夫?」
「何が?」
「一人暮らしとか辛いんじゃないかって」
「大丈夫だよ、ありがと」
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