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<14>
結局、スターリングプロモーションは存続することになった。
大熊さんが蓮君の伯母さんに事務所を畳む事を相談したら、
「それじゃあ、蓮が帰る場所が無くなっちゃいます!どうにか存続できませんか?」
と強く言われたのが決定打になった。
蓮君はその後、無事女の子を出産したそうだ。
静かな山奥に引っ越して、蓮君が良く口にしていたのが
「僕には帰る場所がある。お父さんみたいな大熊さんと、お母さんみたいな南さんが居る、あの事務所。だから、僕は頑張ろうと思う」
その言葉だったそうだ。
大熊さんと僕はその言葉を蓮君の伯母さんから聞き、二人して涙ぐんでしまった。
その後は二人で必死に八方手を尽くして回り、どうにかキッズタレントの養成とスクール、タレントの仲介や斡旋などだけは引き続き行う事にした。
業界での大熊さんの人柄と人徳は知れ渡っており、今でも「仲介はスターリングに」と言って頂ける方が多いのだそうだ。
事業縮小とはなったが、それでもどうにか事務所を継続し、僕達は蓮君の居場所を残す事が出来た。
それと、三木本さん達数名の古株社員さん達は、どうにかそのまま事務所で働いてもらっている。
採用(仮)だった斜と前田の二人(金髪ロン毛とソフトモヒカン)は・・・何と!
インディーズでだが、三人でのデビューが決まったのだ。
ボーカルはもちろん、輝(きらり)君。
しかし輝君は父である大熊さんに、
「デビューするなら、所属は絶対スターリングがいい!!」
と三人プラスレコード会社で直談判して来た。
結局、断り切れなかった大熊さんは、以前と同じように何だかんだで駆け回っている。
デビューしてからの輝君の人気は一段と凄いらしく、インディーズにも拘わらず売り上げがオリコンチャートに乗る程だ。
(まあもともとモデルで知名度を稼いでいたので、当然と言えば当然)
相変わらずモデルと兼業している為、忙しくなって足りてない勉強は今も相変わらず僕が見てあげている状態だ。
そして、僕は晴れて磯貝法律事務所で弁護士としての仕事を始めた。
残念ながら、4月からの予定が7月にずれ込んでしまったが。
今は、蓮君の事件を筆頭に主に性犯罪専門の弁護を担当している。
でも、仕事が無い時や空きの時間には、度々差し入れを持参してスターリングプロモーションに顔を出している。
「あ~あ、いいなぁ。蓮君の赤ちゃん超カワだったじゃ~ん。・・ウチにもあんなカ ワイイ赤ちゃん欲しい!!」
大きく伸びをしつつ、再び閑散としてしまった事務所で、三木本がスマホ片手にそう呟いた。
・・・三木本さんは相変わらずだ。
「じゃあ、もう一人産んでみたらいかがです?」
僕がさり気無くそう言った時の、三木本さんの食いつきと言ったら・・・。
「ハッ、冗談!この私とあの亭主の掛け合わせで、どうやったってあんな高スペックな子供が出て来る事はあり得無いわ。それに、ウチにはもうデビルが二匹存在するのよ!さらにもう一匹だなんて冗談じゃない」
思わず、
「我が子を”デビル”って・・三木本さ~ん、・・・言い方」
そう突っ込みたくなる所も相変わらずだ。
「それよりさぁ、もううちのボスとヤル事ヤリまくってんでしょ?だったらさぁ、南君がそろそろ赤ちゃん産めばいいのよ。・・・そうよ、そうだわ!あのオッサンの種からあの「見た目だけは良い」きらりが出て来てんだから!南君オメガだし、カワカッコいいからさ、畑が良ければ良いのが出て来るかも!」
「だから、言い方が・・・・・」
僕が呆れ顔で苦笑いすると、背後から近づいて来た青年が三木本さんの頭に乱暴に紙袋を落とした。
「うるっせえ!「見た目だけが良い」って・・大きなお世話なんじゃコラ!」
「三木本君~、君ねぇ・・・。曲りなりにも自分の勤める会社の社長に向かって、「あのオッサン」は無いでしょ~・・」
何時しか戻ってきた二人が、そこには立っていた。
「げげっ、きらり!やだぁ、社長も~~」
・・・その態度の「急変」には、僕も大熊さんも苦笑いだ。
急に「オッサン」を「社長」に言い直した三木本さんに、輝君が「オエッ」という顔を作り・・遠慮なくディスり返す。
「「げげっ」っていつの言語だよ!それに急に”しな”作ってもキモイんだよババア」
しかし、三木本さんも黙ってはいない。
「うるせえなきらりの分際で!だったらもう少し、尊敬できるように育てよ!!」
「このクソババア!加代子の分際でほざいてんじゃねえよ!・・あ~、折角スタバのラテ、差し入れで買ってきてやったのに・・・もういい、俺が全部飲む」
へそを曲げ、差し出そうとしていたスタバの紙袋を引っ込めた輝君に、三木本さんが急に縋り付いた。
「ごっめ~ん!悪かったって!!私スタバのラテ、もう二年も飲んでない!お願ぁ~い飲ませて~~!ねっねっ謝るからさぁ~」
これにはさすがに、大熊親子が呆れて顔を見合わせ、大きな溜息を吐いた。
僕は何とかこの空気を変えようと、
「・・ああ!さっき美味しいバウムクーヘンのお店を教えて頂いて、買って来たんです。どうです、皆さんで休憩にしませんか?今用意しますから!」
必死で駆け回って、その場はどうにか事なきを得た。
その夜。
何時もの様に遅い夕飯をとる大熊さんが、大きな溜息を吐きながら
「加代子ちゃんは高卒で入社してから長いからなぁ。きらりなんか、おしめを替えて貰った事もたびたび有ったからな。きらりにとっちゃ、もう親戚のお姉ちゃんみたいなもんだ」
そう呟いて笑った。
僕も笑って、
「みんな大熊さん親子が大好きなんですねぇ。あのフレンドリーを超越した感じが、僕にはちょっとだけ羨ましいです」
そう告げながら、大熊さんにおかわりのご飯を差し出した。
大熊さんはからからと笑って、
「あれだけ古株さんから気に入られてりゃ、もう君もこの家の一員だよ。あれで結構、加代子ちゃんは人を見る目があるからね」
そう言い、ご飯を豪快に食べ始めた。
「うん、この肉じゃが!やっぱ君の手料理は旨いな」
「そう言って頂ければ、僕も作り甲斐があります」
・・・結局、僕はあのまま大熊さんの家にご厄介になっている。
だから・・・・。
「夜」の方も、あのまま。
僕はあれから、毎晩のように大熊さんのベッドに引きずり込まれていた。
そうしている内に、何時しか大熊さんの匂いの染みついたベッドで寝ないと、どうにも落ち着かなくなってしまった。
そして、今日も。
僕達は、このベッドで愛し合うのだ。
「・・・もう挿れて良いか?」
そう尋ねられた瞬間には、もう・・・・。
「は、はいって・・・・ああっ!」
大伍さんの肉茎は、やっぱり僕の身体には大きくて・・・。
「・・何度挿入しても、孝生の中は狭いな・・・」
そう言われてしまう。
でも僕からすれば、大伍さんのが規格外なのだ。
正常位では全部入りきらないし、後背位では収まる代わりに僕が苦しい。
そして・・・今日は正常位。
足を大きく押し広げられ、根元に限りなく近い所まで突き込まれると、そのまま大伍さんに玩具のように扱われる。
体格差があるから仕方無いとはいえ、毎回行われる”これ”は堪らない。
「よし・・今日も、孝生が早く妊娠するように子宮を擦って柔らかくしよう」
そう言いながら、何度も何度も激しく子宮を突き上げられる。
「もう、ヤダ・・・・変になる・・ふあああ・・・」
僕はやはり、もう何度か判らない位いってしまって、すでに涙目だ。
・・ギシ、ギシ・・ギシ、ギシッ・・・ギシ、ギシッ・・・。
ベッドのスプリングが激しく撓る程、大熊さんの責めはとても激しい。
僕はスプリングに揺られながら、何度も快感に震え、何度も背を撓らせる。
「相変わらず、孝生のイキ顔は可愛いな・・・いくらでも頑張れる」
その一言と、頬へのキスと共にまた腰の動きが激しさを増す。
それと同時に、僕のを扱きながら首筋を何度も吸うのだ。
もう僕の首には、いくつもの赤いしみが点々と付いていた。
「あうっ・・・い、いいっ・・・」
「気持ちいいか?」
「うん・・・でも、もう飛びそう・・・限界」
「そうか」
大伍さんはその瞬間、根元まで肉茎を押し込んできた。
・・子宮に、大伍さんの先端が突き刺さる。
余りの気持ち良さに、思わずのけ反ってしまった。
「あああっ!やああああ!」
「孝生の中、凄くうねってる」
そのままゴリゴリえぐる様に、僕は何度も突き上げられた。
「やあぁ・・・もう、いってるっ・・・・」
「知ってる、すんごい愛液があふれて来た。すんごいトロットロ。最高」
・・また突きが激しくなった。
「だめ、だめ・・・」
小さな悲鳴のような声を、どうにか発したその時。
また絶頂へ上り詰めてしまった。
「いやっ、あ・・ああああああっ・・・・!」
がくがくと体を揺らし、天井を見上げながら果てた僕を・・・誰か覗き込んでいる。
「・・・・だ、だれ」
僕は眼鏡をかけていないから、誰か全くわからない。
直後、その返事かの様に唇を奪われた。
「んっ・・・・」
舌を何回か絡め取ったその唇は・・離れるととんでもない事を呟いた。
「親父の言った通りだな・・・イキ顔マジかわ、超ヤバイ」
その声はもちろん。
「きっ、きらり君?!」
「ハハッ正か~い」
きらり君は悪びれる事無く、再び僕にキスして来た。
大熊さんが呆れ気味に、
「親父の情事中に、それを堂々と覗きに来る息子がいるか。さっさと帰れ」
そう言いながらモノを引き抜き、僕をいとも簡単にうつ伏せに転がした。
「ま、待って下さい!僕は嫌です、きらり・・クン・・・はああ!」
僕は必死に待ってくれと懇願したのだが・・。
「スマン、もう出そうなんだ。君の一番奥に出したいから、我慢して」
そう言うなり突っ込まれ、ガンガン容赦ない突きが始まった。
「ひいっ・・・やぁ、あーーーっ・・」
シーツを必死に握りしめ、耐える僕の視線の先には・・・。
熱い眼差しでじっと成り行きを見つめる、輝君の顔が。
「うわ・・・エロい顔」
「ハハッ、中はもっとエロい事になってるぞ~それ、それ!」
「やめて、やだ・・・・」
大伍さんはまたしても調子に乗って、僕の中をかき回しだした。
激しくこだまする水音に、輝君が興奮しているのが分かる。
しかし・・僕が何度も「やめて」と言っている、その声は大伍さんには聞こえてはいない。
(こんな状態で、イキたくないのに・・・・!)
そんな中・・僕は悲しい事に、またも絶頂を迎えてしまった。
「あんっ・・・あ、やああああっ・・・!」
「くそ・・・搾り取られる・・・」
その直後、大伍さんの肉茎の先端から熱い粘液がほとばしる様に出て来て・・僕のお腹の奥で脈打つように、全てを吐き出した。
「はあっ、・・はあっ・・・・・」
肩で息をする僕の隣で輝君は、僕達の繋がってる辺りにしゃがみ込んでじっと見つめ、
「すっげえ・・・これ絶対妊娠するだろ」
とか未だ勝手な事を言っている。
「あっち行けって言ってんだろ、見世物じゃないんだから」
大伍さんは肩で息をしつつ、全てを出し終えたモノを引き抜いた。
「・・・見ないで・・きらり君。お願い・・・」
「無理、毎晩南さんの喘ぎ声聞かされてもう限界だし」
僕の懇願は・・いとも簡単に一蹴された。
それどころか、行為の直後の・・緩んで滴る窪みを、輝君は物欲しそうに見つめ
「なあ・・・俺のもうパンパン。一回だけ、ねえ一回だけでいいからさ、ね?」
そう懇願して来た。
流石にこの無神経さに、頭に来たのだが・・。
大伍さんが輝君の頭をスパーンと張り倒し、
「馬ッ鹿野郎!何処の世界に夜中に親父のセックス見に来て、その相手におねだり要求する奴が居るんだよ?!」
そう怒鳴りつけた。
それがとても嬉しくて、思わず身体を起こして
「大伍さん・・・」
何かを語りかけようとしたその時。
「まだもう一回させてくれ、足りない」
大伍さんがまたも圧し掛かって来た。
しかしそれに輝君が待ったを掛けた。
「冗談じゃねえよ、毎日毎日セックスの生声聞かせやがって。俺の欲求不満の責任を取りやがれ!」
大伍さんも黙っていない。
「やかましい、俺の家で俺が誰と何をしようが全て俺の勝手だ!嫌ならこの家を出ていけ。解ったな、この”扶養家族”」
「上等じゃねえか、だったら南さん連れてこの家なんか出て行ってやる!」
「・・・何で、僕が?」
「馬鹿言え、孝生は俺の恋人だ。お前ごときにはやらねえよ!」
「ごときとはなんだよ、ごときとは!」
「お願い、落ち着いて・・・」
「もういい、親父相手じゃ話になんねえ。なあもう俺と一緒に出て行こうぜ、大切にするからさ南さん」
「ふざけんな、孝生は俺のモノだ!」
「もう・・・いい加減にしなさい!」
僕は思わず、大伍さんを押しのけて立ち上がった。
・・・のだが。
その瞬間、股間をつうっ・・と何かが滑り落ちて来た。
それは勿論・・・”アレ”だ。
「えっろ・・・・」
「最高の眺め」
「ひゃああああ!」
うっとり見とれる二人を尻目に、僕はそのまましゃがみ込んでしまった。
そのまま顔を真っ赤にして俯く僕に、
「うぶで超かっわいい~。女なんか目じゃないな」
「馬鹿、女には女の可愛さがある。ただ、今この場で女と孝生と二択だったら、俺は迷わず孝生を取る」
そんな勝手な事を言いながら、二人は僕の頬にキスをした。
「南さん、お・ね・が・い」
「孝生、愛してる。・・こいつは放っておいて、続きをしよう」
僕はもう限界で・・・・。
思い切り立ち上がり、涙目で
「二人共、大嫌いだ!!!」
そう叫んで自室に駆け戻り、そのまま鍵をかけてしまった。
・・・その後、追いかけて来た二人が扉の外で何度も謝ったが、到底許す気にはなれない。
その内・・・。
「もう、ゴメンって!この通り謝るからさぁ・・許して」
「馬鹿言え、そんなチャラい態度で許してもらえる訳ねえだろうが!・・そもそも、お前が俺たちの邪魔さえしなけりゃ、こうはなってないんだぞ!」
「何言ってやがる!俺に散々南さんの喘ぎ声聞かせやがって・・。おかげで寝不足と欲求不満でどうにかなりそうなんだよ!」
「じゃあ出ていけ!」
「じゃあ南さんを俺にくれ!」
「ふざけんな!」
「俺は本気だっつーの!」
扉の向こうの情けない親子喧嘩に・・・もう呆れるしかなかった。
「ああもう・・・どうしてこうなっちゃうんだろう・・・・」
南はまた、大きな溜息を吐いた。
大熊家の夜は、今日もこんな感じで更けてゆく。
南の溜息は・・・当分途切れる事は無いだろう。
可哀想だけれど。
大熊座の親子 了
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