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「──え」
私は正面に座る男──谷元亮介の顔をまじまじと見つめた。
おしゃれな店内にはジャズっぽい音楽が控えめに流れている。
「だから……俺たち、別れようって話」
その顔にほんの一瞬苛立ちが滲んだのを私は見逃さなかった。
「……『別れよう』?」
私はゆっくりと、亮介の言葉を繰り返す。
彼は片眉を上げただけで何も言わない。
「……『別れてください』の間違いじゃなくて?」
私は手にしていたカップをかちゃりと下ろし、にっこりと微笑んだ。
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