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幸せな日
彼、冬利(とうり)は驚きを隠せていない。 そりゃそうか。
俺、春馬(はるま)は男だ。 ゲイじゃない。けど好きになってしまった。
「気持ち悪い」そう言われたらそれはそれで吹っ切れる事も出来る。 覚悟の上での告白だ。
でも目の前の子柄な少年は、少し泣きそうな顔で
「うっわ…マジで!? 超嬉しい!!」
今度はこちらが驚く番だった。
別に端から諦めていた訳では無い。でもこんなに乗り気だとは思いもしなかった。 元の性格かもしれないが。
「あ、そうだ。 ちょっと良い?」
嬉しさで舞い上がっている俺に不意に冬利が聞く。
「もしさ、明日僕が死んだら、その先の長い人生春馬ちゃんはずっと僕だけを愛してくれる?」
冬利は試す様な目で俺を見ていた。
(俺は…どう答えるのが正解なんだ?)
迷っていても仕方が無い。
「俺は冬利が好きだ。今までも、これからも…だ、よ…?」
フィクションでしか見た事も聞いたことも無いような台詞に恥ずかしくなって、最後は聞こえないくらいの小さな声だった。 それでも冬利はニッコニコ笑って
「エヘヘ…春馬ちゃんに言われると嬉しいな!
僕…幸せ過ぎて明日死ぬかも‼ なーんて!」
「やめてくれよ!?」
「あははっ! そんな訳ないじゃん!」
幸せそうに満面の笑みで言った、
高校2年の夏。
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