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幼馴染み
「光お帰りなさい。あっ友伽里ちゃんも一緒なのね」俺の母親が箒を手に玄関前の掃除をしている。
「おばさーん」友伽里は満面の笑顔で母親に飛びつくように抱きついた。
「今日も友伽里ちゃんは可愛いわねぇ。本当に、光みたいな男臭い子より友伽里ちゃんみたいな可愛いい女の子が私は欲しかったわ」母も友伽里のことをぎゅっと抱きしめている。
その様子は、まるで久しぶりに対面した親子のようであった。
「私もおばさんの子供だったら嬉しかったのに~」お世辞なのか本音なのかは解らないが、友伽里の母親がこの会話をもしも聞いたらいい気がしないであろう。
「別に俺は代わってやってもいいぞ」俺は、ちょっと嫌味っぽく言ってやったつもりであったが、あまり彼女達には響いてはいないようであった。
「もう友伽里ちゃん、光と結婚すればいいんじゃないの?そうすれば私の本当に娘になるし全てが丸く収まるわよ」明らかに俺の言葉はハナッから無視されているようであった。なにが丸く収まるのかは意味が解らない。
「えー、いいんですか?私みたいなのが光君のお嫁さんで?」二人は、なにやら社交ダンスのダンサーのように一緒に顔をこちらに向けた。それが滑稽で少し笑いそうになってしまった。
「ないない!そんなのあるわけなーい♪」俺は頭の後ろに腕を組み、自作の歌を口ずさみながら否定した。
「もう!」友伽里が何故か怒ったように俺の背中を思い切りり叩いた。
「痛い!」思いのほか強烈な張り手であった。叩かれた箇所を擦ろうとするが届かない。運動不足のせいか柔軟性が無くなってきた。
「本当に、あなた達は兄妹みたいね。友伽里ちゃん、いつも光と仲良くしてくれて本当に有り難うね」母は友伽里にお礼を言った。
「いえいえ、そんな光君ってなんだかほっておけなくて……」友伽里は頬を真っ赤に染めてはにかんでいるようである。
「これからも光の事をヨロシクね」母は丁寧に依頼した。
「はい」友伽里は汐らしく返答を返した。
「おいおいおいおい!何を勝手に話を進めているんだよ。母さん、そんなことを言って、死亡フラグが立っているぞ!」アニメや漫画ならこのあと交通事故とかで絶対に死んでしまうパターンだ。
「なによ!縁起でも無いことを言わないでよ。でも、冗談抜きで友伽里ちゃんみたいな娘が本当に欲しかったなぁ。本当に結婚しちゃいなさいよ、光!」その母の言葉を聞いて、友伽里は顔を真っ赤にして俺の顔を見ている。
「なにアホな事を言っているんだ、友伽里は同じ歳だけど、なんだか妹みたいで恋愛感情なんて俺はサラサラねえよ!俺はもっとこう、何て言うかボインボインみたいな人が好みなんだ。友伽里もアニーズのアイドルみたいなのが好みだって言ってたぜ。なあ友伽里!」宙を見ながらその言葉を吐いた。その直後、鼻を啜るような音がする。
「……」音のする方向に目を向けると、友伽里が下を向いて涙を流していた。
「おっ、おい、どうした?」女の涙は卑怯である。何故彼女が泣き出したのかは皆目見当ない。
「な、何でもないわよ!ホコリが目に入っただけよ。ほっといて!」そう言うと、目を押さえながら彼女は自分の家に逃げるように走っていった。
その一部始終を見ていた母が俺の頭を後ろからペチリと叩いた。
「痛い!なんだよ!」叩かれた頭を摩る、変なことに。
「本当に女心の解らない男だね。母さんあんたみたいな気の利かない男を生んだと思うと悲しくなって涙が出てくるわ」大きなため息をつくと、呆れ顔をしながら母は家の中に入っていった。
「なんなんだよ、俺が悪いのか?」俺は友伽里の涙の意味が解らず、頭を掻いた。
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