語り部

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語り部

 やあ、また君か。飽きもせずによく来るものだな。私の話がそんなに面白いのか?  ふうん、面白いかどうかは分からないが好き、か。今日は何の話をしようか。……そうだな、こんな話はどうだ? ちょっとした昔話さ。ざっと四十年ほど前かな。  ものを動かしたり、箒で空を飛んだり、何もない所から何かを取り出してみたり、そんな魔法はこの世には存在しない。小説や映画などのファンタジー世界のものに過ぎない。憧れのその力は、自分のものにはできない。あくまで夢の世界のもの。君もそう思っているだろう。東洋にはそんなものは……。  え? 自分は信じている? まあ、それでもいいか。世間一般の人は夢と思っているだろう。けれど、その考えはこの国には当てはまらない。  グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国。この国のファンタジー文学は優れているとよく言われるが、それは当たり前のことだ。なぜなら英国人は魔法や妖精といった不思議な存在と常に隣り合わせなのだから。まあ、私を見れば分かるだろうけれど。
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