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「……ええ。私に結婚したい人が出来るか、悠真が一人でも伊ヶ崎の次期社長の座の基盤を築けたら……だったわね?」
「……そうだよ」
悠真は静かにワイングラスを傾ける。男らしい喉仏が上下して、一瞬その姿に魅入ってしまった。
二人で同意して離婚届を書いた。
それを提出しに行くのは、私に結婚したい人が出来るか、悠真が次期社長への基盤を築けるかのどちらかが達成出来た時。
高校生の私達はそう取り決めていた。
お互いの未来に支障をきたすので、実は結婚発表はしていない。一部の親族のみしか、私達が結婚していることを知らないのが現状。
それじゃあ、この結婚の目的は果たせていないじゃないか――と言われるかもしれない。
けれど、私達が若すぎる事を理由に、下手な勘ぐりをされたくないから発表は延ばしてほしいと二人でお願いした事と、悠真が両家の両親に非嫡子という立場でも、ある程度次期社長への基盤を築いてから発表した方が更に効果的だと説得したからだった。
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