旦那様と、波乱?

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「女の気持ちって俺には分かんねえからなあ。だってさあ、俺は美咲が悠真に迫るなんて思ってもみなかった」 「……その事なんだけど」 「ああ、記憶飛ばしたってやつ?」  アホか、といったように半眼になった涼は私を見下ろした。本当に失敗してしまった。ちゃんと覚えてれば、あの時不安になっていなければ、当日に解決出来たのに。 「ちゃんと言えばよくねえ?何をそんな拗らせてんの?」 「急に悠真が甘くなっちゃって……、夢みたいで、それが無くなるって思うと辛かったの。……今思うと間違ってた。逃げだったと思うわ」  最初は悠真を政略結婚から解放しようとしていた。それが正しいとずっと思っていた。  涼はしばし悩んだ末に「いいんじゃねえの?」とあっさり言った。 「恋愛に後悔をする事は沢山あっても、間違いはないだろ。まず正解がねえんだし」  口元に手を当てて考え込む仕草をしたまま、涼は高い位置から私を見下ろした。 「そうだよなあ……、美咲にとっては初恋になるんだよなあ」 「そうだけど……」  ニヤリと涙ボクロのある目元が悪戯っぽく細められる。またからかわれるんじゃないかと、私は内心身構えた。
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