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結局の所、結婚した年齢が若すぎたのは、伊ヶ崎の当主夫妻が子供が出来ない事に苦労したので、私達は早く結婚して早く子供を作れという事らしい。
詳細を聞いてはいないが、親戚から散々出来ない子供について言われ続けていた苦労をして欲しくないのだとか。
本当に大人達の負のスパイラルが影響しまくっている。
まあ、政略結婚なんてそんなものなんだろうけど。
「三ヶ月後、伊ヶ崎の会社創立百五十周年のパーティーがあるんだ。このままだと君も連れて行くことになる。意味、分かるよね?」
「ええ」
音もなくワイングラスをテーブルに置いた悠真は、胡乱げな表情を見せた。
「……好きな人はいないの?」
「……受付事務課は出会いがないの」
思わず持っていたワイングラスのステムを指先で握り締めてしまった。
いけないいけない。これでも円城家の元お嬢様なんだから、もうちょっと気を付けないと。動揺しちゃダメ。
「本当に?」
「本当に。私が真っ先に家に帰ってるの、知ってるでしょ?」
「まあね」
チラリ、とこっそり目の前に座っている人を盗み見る。
ダークブラウンの柔らかそうな髪に、同色の切れ長の瞳。高い鼻筋の悠真はどこからどう見てもイケメン。
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